by Richard Francis Walker, Ph.D., R.Ph.
12兆の細胞を覚醒させる
若がえりの最先端医学
ネオエイジング
加齢による頭髪の脱毛や白髪化はお肌の老化と同様、見た目の変化が顕著となる老化の代表例です。
頭髪はその一本一本すべてが毛包と呼ばれる毛根単位によって作りだされています。そのしくみは毛包のバルジと呼ばれる部位に備わった毛母幹細胞という特殊な細胞が新たな細胞を生みだし、それが毛包の下部に送られて毛母細胞になることから始まります。そして、毛包の下部に多数の毛母細胞が配置されると、細胞分裂のくり返しによって作られた細胞が次々と毛穴に向かって押し上げられていきます。
こうした一連の現象が一生を通じて何度もくり返されることで、充分な量の頭髪維持を可能にしていたのです。
ところが、毛母細胞に加齢の影響が及ぶと細胞分裂にも支障が生じ、ケラチンの生産も困難になってしまいます。すると再び毛母幹細胞からは、新たな毛母細胞の供給もさかんにくり返されるようになってしまいます。
すると、こうした毛母細胞のくり返し供給が毛母幹細胞の負担となり、次第に早い段階から幹細胞自体の消失や毛包の縮小化(ミニチュア化現象)を生じてしまうのです。
頭髪の着色といった現象は、同じくバルジ領域の色素幹細胞から新たな細胞が生みだされ、毛包下部に送られてメラノサイト(色素細胞)になるところからはじまります。こうして毛包下部に形成されたメラノサイトはメラニン色素を生産し、毛母細胞によって作られた無着色のケラチン線維に自分の髪色を染めていきます。こうした一連の現象の繰り返しと毛母細胞との連携によって、そのヒト固有の色合いを持った頭髪が作りだされるのです。
しかし、メラノサイトにも加齢の影響が及んでしまうとメラニン色素の生産は減少し、色素幹細胞からはくり返し新たなメラノサイト供給が余儀なくされてしまいます。すると色素幹細胞の負担増加は毛母幹細胞と同様に早い段階から幹細胞の消失をもたらし、やがてはメラノサイトも枯渇してしまうのです。
そこでこうした老化が始まった頭髪の細胞には、脱毛や白髪に気づきはじめた比較的早期の段階からの治療が薦められます。なぜなら老化の進んだ毛包の状態を長く続けてしまうとそれぞれの幹細胞も早期に消失し、新たな毛包の再生が困難になってしまうからです。
もちろん使用中の育毛剤があれば、それらとの併用も何ら差し支えありません。ぜひ、成長ホルモンの増量効果を含めた毛包再生も合わせて、より良い頭髪の改善を目指してまいりましょう。
残念ながら、今まで述べた内容は男性型の脱毛症(AGA)にはあまり効果が得られません。なぜならAGAの特徴には、もともと男性ホルモンが多量に分泌されるというホルモン的な特徴を示す場合が多いからです。
しかし、成長ホルモン分泌の向上が意外なところで応用されるようになりました。それは増毛治療に用いる薬剤(頭皮に塗布するもの、あるいは内服薬も含む)によって生じる男性の性機能不全が関わっていたからです。現在、主力となって販売されている増毛治療薬は、どれも男性ホルモンの分泌を抑えてしまう副作用が強く、ほとんどの方が同様の悩みを抱えてしまいます。
ところが、治療によって成長ホルモン分泌が回復し始めると男性ホルモンの抑制も解除され、最大の悩みであった性機能不全も見事に回復する例の多いことが判明したのです。
若がえり治療とは異なりますのであえて詳細は省きますが、ご興味のある方はぜひ試してみると良いでしょう。